三度目です
2017.12.03
周囲の空気が緊張に包まれています。
もうこれで三度目です。なにが起ころうとしているのか分かるようになっています。
母の車いすを押してしかるべき位置に待機します。
いつもなら少し立ち止まっただけで、すぐに「トイレ」と言うはずなのになにも言いません。
ずいぶんと待っています。
そのうち警護の人達の動きが慌ただしくなり始めました。
白バイに続き、車列が続きます。
黒塗りの警護のクルマ、そのあとに大切な人が乗られるクルマが向かってきます。
このあたりの要領は三回目ですから掴めています。
そして目の前をクルマが通り過ぎていきます。
今回ばかりはこれまでとは違っていました。
クルマは、ほぼ止まりそうなくらいに徐行。窓を開けて微笑んでくださいました。
いつもならなにも状況が理解できないはずの母、合掌しています。
このときばかりはすべて理解していました。
「あぁ、ありがたい、ありがたい」と。