2006.06.30
昨日、ある館生、体調を崩して一日中寝ていた。ヤツガレが気づいたのは夕方4時ごろ、この子はこれまで終日部屋で過ごすことはなかった。
“具合が悪い?”と思い、ドアをノックしたり、携帯にメールを入れたり、電話したりしたが連絡がつかない。やむなく部屋を開けて様子を見ることに。もちろん女性の部屋だ、男性が入るわけにいかない。だから家内に任せた。
暗い部屋で本人は就寝中だった。聞くと「熱もさがり大丈夫」との返事。
しばらく外から部屋の灯りが点くか伺っていたが、その日は一時照明が点いただけで、あとは真っ暗な部屋のままだ。こういうときいろいろ心配ゴトが浮かんでくる。
食事は? おかゆを作ろうか、熱がぶり返していないか? 氷枕の用意は? クスリは? 早めに病院に行く必要があるのでは、等々、気にしだすと止まらない。そこで11時になってもう一度様子を見に行くことにした。何も食べていないとしたら体力がつかない。一応念のためスープを用意しドアを開けると、中から本人の声で
「寝かしておいてください」
家内いわく「大丈夫そう。明日まで様子をみましょう」とスープを台所に置いてきた。
そして今日、彼女、ヤツガレも家内も気づかないうちに学校へ。
館生の中にはいろいろなタイプの子がいる。大したコトでもないのに甘えてくる子もいる。数年前、ある新入館生が悲鳴を上げて泣きついてきた。
「救急車を呼んでください!」
「えっ、どうしたの」
「ホッチキスが・・」
見れば右手の人差し指にホッチキスの針が刺さっている。その指先には米粒より小さい出血が。「こんなの大したコトないよ。ホラ」と針を抜いてあげた。
「あとは消毒しておこうね。ぜんぜん心配いらないよ。これで大丈夫」
「病院に行く必要は100%ないから・・」
本人は涙を浮かべている。きっと甘えん坊なのだろう。まったく可愛い。
それぞれ館生には個性がある。自分が心配されていることで喜ぶ子もいれば、干渉されることをうとましいと思う子もいる。他人のお嬢様を預かる当方としては、どうしても万一のことを考え、早め早めに対処しようとする。だが、これも館生によっては余計なおせっかいと映る。今回のこと、彼女にとってヤツガレの行動は迷惑だったようだ。相手は生身の人間、一律とはいかないことは分かっているが、なかなか悩ましい。
今回の彼女、今夜は早めに睡眠をとり休養に努めているようだ。はやく治ることを祈る。
2006.06.29
梅雨の中休みがけっこう続いている。今日の東京は31.5度、完全に真夏モード。
今日は株主総会のピーク日。前に務めていた会社の総会に出席してきた。はじめ今年は行くまいと決めていたのだが、数日前に突然気が変わった。
株主総会、ヤツガレもその昔、ひな壇の末席を汚していたことがある。今日、株主として議事進行を見守ったが、会社側と株主側、おなじ空間を共有しつつも双方の立場で聞こえ方がまったく違うことに気づいた。よく“相手の立場に立って考えろ”と言うが、実際はその立場でないと真実は分からない。今日の学習は、“分からない”ことが分かった???
ドミほりに戻って昼食を済ませ、運動のつもりで自転車に乗ってきた。新入館生が六本木のレストランでバイトを始めたことは前に書いたが、今日、その店を見てきた。所在は六本木というより西麻布が正しい。その店は名が知れた店で、構えも大きく立派。ヤツガレごときには敷居が高すぎる店だ。
そういえば彼女、今日は夕方からのサークルを終えてからバイトに行くと言っていた。「私、忙しいのが好きなんです」と言った彼女の言葉が思い出される。
新入館生N.Mさん帰館するなり・・・・
「あぁ暑い、暑い。宮崎に帰りたい」と大きな声。
「もうすぐ夏休みじゃない。あとすこしガマンすれば故郷に帰れるヨ」
「それが、部活、休ませてくれないんです。2ヵ月間帰省しょうと思っていたのに」
館生の中には帰省できる日を待ちわびる人がいるかと思えば、ずっと東京に残りたいと言う子もいる。それぞれに考えや想いがある。
夕方4時、この時間になっても在室のままの新入館生が気になった。とりあえず、ドアをノックしてみるが応答がない。しばらく時間をおいても応答がない。今度は携帯電話にかけてみたが出ない。もしかしたら学校かと思い、携帯にメールを入れる。だが二時間たっても返信がない。夜7時、万一のことを考え、家内がお部屋のカギを開けて様子をみることにした。カギをガチャガチャとさせたところで本人が気づき、室内から返事があった。熱を出して寝ていたが今は大丈夫という。
「なにかして欲しいことある」と聞くと・・、
「もう大丈夫です」との返事。彼女、なにごとも自分一人で解決しようとするタイプ、他人に迷惑をかけたくないという想いが強いようだ。遠慮なくなんでも言って欲しいとは思うのだが、それぞれに考えや個性がある。ここはそっと見守るしかない。それにしても大したことがなさそうなので一安心。明朝には回復していることを願う。
2006.06.28
日中ひさしぶりに晴れとなった。ぐんぐん気温があがり蒸し暑い。
門限が迫ってきた夜11時前、ある新入館生からメールが入った。
「5分ほど遅れます。すみませんが門を開けておいてください」
ドミトリーほりでは“門限が少し遅れる”“外泊します”という連絡はメールでも済む。深夜帰館ではあるが、この館生、自転車で通っているのでいくらか安心だ。
さっそく返信メールを送信。
「了解しました。お気をつけてお帰りください・・」と。
近くの交差点まで出迎えにいくが、それ以上はどのルートで帰ってくるかわからないので出迎えも限界がある。なかなか戻ってこない。5分遅れの予定が10分たっても来ない。“なにかあったか”と気になりだしたころ、ようやく戻ってきた。
キィーと自転車のブレーキ音が響く。
「すみませ〜ん。六本木からの帰り道、近道をしようとしたら迷ってしまって」
彼女、六本木のレストランでバイトを始めたのだ。それにしても驚いた。
「えっ! 六本木まで自転車で行き来しているの?」
「えぇ、駒場から渋谷へ出て、国道246を走って六本木のルートで、約25分です」
簡単に答えるではないか。上京して一人暮らしを始めたばかり、地理も不案内だというのに、よくまぁ果敢に挑戦するものだ。その物怖じしない度胸のよさに感心させられた。
もう少し近いルートを教えてあげると約束はしたもの、交通事故も心配だし、身体的にも続くであろうか、気になるところだ。
2006.06.26
Momoをシャンプーして、館内のバキューム清掃を終えたときK.Fさんに逢った。
「おはよう〜。今日も頑張ってね。行ってらっしゃい・・・」
大きな黒い瞳、黒い服がよく似合うK.Fさん。いつもはジーンズ姿だが、今日はめずらしくスカート姿。
「あれ! 今日はスカート?」
「おはようございます。はい。今日バイトの面接があるんです」
「あぁ、それでなの・・・。がんばってきてね」
そして夕方、
「お帰りなさい。どうだったバイトの採用試験?」
「受かりました」とステキな笑顔。
「よかったね!!! おめでとう。それで・・何処なの?」
「キャンパス内のフレンチレストランです」
「よかった、よかった。そこでのバイト、うちの館生二代目になるよ」
最近、ドミトリーほりの館生で新しくバイトを始める人が多い。なかには両親からNGといわれているのにバイト探しを始めた館生もいる。
実家にばかり負担をかけたくない、という想い。またキャンパスライフに飽き足らず、少しは実社会に触れてみたい、自分の可能性を試してみたい。友人たちに遅れはとりたくない、そこにはいろいろな想いがあるようです。
新入館生の彼女らも一人暮らしを始めておおよそ3ヶ月が経った。学園生活、東京での生活にも多少慣れ、もっともっと社会を知りたいという欲求が膨らむのもやむを得ない。みなどんどん成長している。新しいことへの挑戦を心から応援する。
2006.06.23
“女子学生会館ドミトリーほり”のDormitoryは大学の寮とか寄宿舎のこと。
“寄宿舎”の言葉には古めかしい響きを持つのはヤツガレだけか。最近では滅多に聞かないが、先日この言葉をある館生から借りた卒業記念ビデオ(DVD)で見つけた。
学校はある女子学院。この学校は中学・高校の6年間を寄宿舎生活で過ごす。借りたビデオは、生徒が卒業記念として寄宿生活の一部をビデオに記録、これを記念として卒業生に配ったものだ。
ヤツガレが抱く“寄宿舎”の言葉のイメージは、集団生活、相部屋、プライバシーのない生活、先輩後輩の関係が厳しい縦社会といったものだ。歳のせいだろうが。
だが実際にこのビデオを見た印象は、まったくそれとは違っていた。まず、ビデオに映る生徒一人ひとりがとても明るく楽しそうだ。撮影を前提にしたポーズと思われるかもしれないが、そのような感じはまったくない。カメラに気づくと自らアップに映ろうとする生徒もいれば、シャイに構える生徒もいる。みなごく自然体、誰にも萎縮しているような姿はない。教える側にも生徒の個性や持ち味を十分に活かそうとする姿勢が垣間見える。
生徒たちの自由闊達、いかにも楽しげな暮らしぶりは、先輩から受け継いだ集団生活を円滑なものにするための知恵なのか、あるいは何の先入観もない歳(小卒と同時)から始まる集団生活ゆえ自然と身についたものなのか、そもそもの校風がそうさせているのか、個人重視の時代背景からか分からないが、誰もが特別な意識もなく身につけているようだ。
ヤツガレが嬉しいのは彼女らの挨拶だ。誰はばかることなく大きな声で
「おはようございます」 「ありがとうございます」 「ただいま戻りました」
と言う。それも語尾がハッキリしている。聞いていて気持ちいいことこのうえない。朝一番に聞くこの挨拶はボ〜とした気持ちをシャッキとさせてくれる。正面を向きこちらの目をしっかりと見てからの挨拶、ボールは貴方に投げました、ちゃんと受けてくださいとハッキリ伝わってくる。この元気な挨拶を聞くと、こちらにも勇気が沸いてくる。このように感じるのはヤツガレだけでなくきっと他の人もそうであろう。
集団生活・共同生活、そしてチームや組織における協同活動、いずれにもコミュニケーション能力が欠かせない。そのコミュニケーションの基本は、まずは挨拶からなのだということを再認識させられた。
写真左は館生Nさん。これから学校へ出向くところ。彼女少し前に門を出たのだが「教科書を忘れた」といってあらためて登校するところ。ブラジル戦を見たので睡眠時間1時間だったそうだ。 「気をつけて、いってらっしゃい」
写真右は代々木公園で見つけたがく紫陽花。